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[23]教え(2004/02/07 10:26:05)
「そうそう、確かこんなだったなあ」
11年ぶりに見た父の合唱指導。何よりもフレーズ感を大切に扱い、特にフレーズの最後の処理は丁寧すぎて拍が伸びてしまいそう・・・でもそれを不自然に聞こえさせない絶妙の間合い。なつかしいよりもむしろ新鮮にさえ聞こえます。
大和高田市で活動している女声合唱団「櫻鳴」が開く3月の演奏会で、混声のステージをプログラムに入れたい、という要請でシェンヌの男声メンバーが賛助出演することになりました。その一回目の練習が先日行われました。指揮は私の父です。
私の父は今年71歳。11年前まで奈良県の南部、吉野郡にある下市中学で30数年にわたり音楽教諭として合唱部を指導してきました。NHKコンクールで奈良県代表になること33回。全国大会にも2度、駒を進めました。また連盟のコンクールに中学の部門が加わった初めての年に全国の舞台を踏んでいます。
私がシェンヌを立ち上げた頃、つまり大学生になったあたりから夏休みになると毎日のように下市中学に通い、コーラス部の練習を見学していました。当時はまだ私自身が何も分かっていませんでしたから、その声の艶やかさと中学生離れした声量、声の深みなどにただただ圧倒されるばかりでした。
やがて私も親父を目標に(ここの記憶が判然としないのですが)高校の音楽教師になりましたが、この頃になると親父は練習中に私に意見を求めるようになりました。最初は的外れなことを言っていたのだろうと思いますが、次第に私の考えやアイデアが演奏に反映されるようになり、まるで二人の共同作業で音楽作りをしているような気持ちになっていたのを記憶しています。
しかし今思えば、あれは親父の無言の教え。
「技術は見て盗め」
きっとそんな考えがあったのだと思います。
今でも「お前の音楽は味がないな」とよく言われてしまいます。
でもそれは親父の「味付けたっぷり」の音楽に必死で逆らっていたのかもしれません。
「早く自分の味を出せよ」
11年ぶりに見た、合唱指導をする親父の背中は、やはり無言で私に教えてくれました。
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