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[36]忘れられない記憶(2004/09/02 21:51:47)
あ〜あ、新学期。そしてコンクールシーズンの到来。
そう言えば、私がまだ高校生の頃はNHKコンクールの県予選が9月15日に固定されていました。朝から夜まで中学も高校も続けて演奏していたと思います。活気あったよな、確か・・・。
おそらく、大学入試の制度も今とは違って、日程的にもっと後ろにずれていたんでしょうね。どのクラブも3年生が秋まで活動していました。「勉強に専念するから」なんていう理由で辞めていったヤツはいなかったよなあ、確か・・・。
それに比べて今は、「他にやりたいことができたから」とか「中途半端な気持ちだとみんなに迷惑かけるから」とか「お母さんが辞めろっていうから」なんて理由で簡単に去っていきます。こちらが、いくら頑張って生徒の心に触れる話をして(いるつもりで)も、「いえ、もう決めましたから」・・・って。
「おまえ・・・そんな寂しいこというなよ・・・」と心の中では思いながらも、「ま、自分の決めたことなんだから、辞めても精一杯がんばりなさい」とか、思ってもないことを教師ぶって言っている自分があほらしい。しかしまあ、そんな生徒に限って、辞めた後は何もしないでだらだらしているケースは多いですね。あ、もちろん、本当に頑張った生徒もいますが。
今、私が勤務している学校は公立の普通科校ですが、スポーツのコースがあって、運動部が盛んで、文化部に所属している生徒って、正確にはわからないけど、全部合わせても50人もいないんじゃないかなあ。私は転勤してきて2年目です。もちろん合唱部を作ろうと試みてはいますが、難しい状況です。この学校で4校目。今までの3校は合唱部が存在しない学校でしたが、同好会から立ち上げ、なんとかコンクールに出場できるレベルまでは持っていけたのですが・・・て。いやあ、「今の生徒たちは」とか「みんなスポーツばかりするんですよ」みたいな理由って、怠慢教師の言い訳でしかありません。ええもちろん私のことです。
私の父は「どんな少ない人数でもコンクールに参加し続けなさい」と教えてくれて、そのことの本当の意味を、実際続けてきたから理解できた部分もあります。
自分自身にとっても「続けなければならない」、と思う緊張感はとても大切です。当たり前のように人が目の前に集まってくることなんてあり得ない。
集める努力、集まる魅力、そして続ける熱意。
現状に甘んずることなく、「伸びを感じているときの状態」を維持することが、合唱団の活気と魅力につながります。放っておいても前に進んでいく時期っていうのは確かにあるんだけれど、それってすでに惰性の段階ですよね。
おーい、シェンヌ、大丈夫か〜。
学校の合唱部には中学で合唱を経験していない生徒がたくさん入部してきました。一から声作りをしなくてはなりませんが、変なプライドや先入観を持たないことは「色」を作るのには好都合です。そして高校3年間ですっかり合唱にハマる部員も少なくありません。
しかし、一人ぐらいうちの合唱部に憧れて入部してこないかな・・、なんてよく思ったものでした。
いつも話に出てくる平城高校で、少しずつ「実績」を積み上げて、ようやく「スタイル」が形作られてきたころのこと。入試発表の日に県内の、ある合唱名門中学の顧問の先生が発表を見に来られていて、「うちの部長が平城の合唱に憧れて受験して受かったから、よろしく頼むぞ」と言っていただいて、飛び上がりたいほどうれしかったことが、たったの一度だけあります。その日の内に現役部員にもそのことを話し、一緒に大喜びしたものでした。あれは本当に嬉しかった・・・。
ところが、そのわずか10日後、年度末の人事異動で私は、転勤。内示を受けたのは音楽部の定期演奏会の2日前のことでした。さまざまな事が思い出され、同時に2日後の演奏が最後なのかと、諦めきれないような、何とも切ない気持ちでした。内示の日の吹奏楽の練習では部員に事実を伝え、それでも残された時間も少ないから、と複雑な気持ちで合奏をしました。
「合唱部員には明日にでも話さないと」などと考えながら車で帰宅しているとき、
突然あることを思い出して「はっ!」としました。
「あの、生徒、4月に入学してくるあの子をどうしよう・・・」それに気づいた瞬間、胸を締め付けられるような辛さに襲われ、涙が出ました。
今考えれば彼女は「平城高校の合唱部」に憧れて入ってきたのだから、私の転勤は別に問題なかったのかもしれません。しかしその時の私は、彼女に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
その生徒は結局高校でも3年間合唱を続けました。毎年顧問が替わり、3人の指揮者のもとで歌うというあまり例のない苦難に遭いながらも部員を引っ張り続けました。ありがたいことです。頭が下がります。
現在は縁あって私たちの仲間となって歌っています。
熱を冷ましてしまわないこと。そのことがやがて生み出す大きな力。
「継続は力なり」・・・ いいえ「継続」のその前に、それを生み出す熱い熱い思いがあるのです。
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